漢方薬は長く続けないと効果が出ないと思われているようですが、決してそんなことはありません。元々漢方の古典「傷寒論(しょうかんろん)」は処置が遅れると死んでしまう急性の熱性病(腸チフスなど)の治療法を記載したものです。調子が悪くなってから比較的早い時期の場合や痛い、痒い、出血などは本当に速く効きます。【残念ながらそういう方は余りお見えになりませんけど…】
長くのむ必要があるのは、長い間かけて具合を悪くしたような場合やこじらせた場合、慢性の病気、アレルギーなどその人の体質によるもの、環境によるもの、心因的な原因によるものなどの場合で、これは現代医学でも同じことでしょう。慢性の病気でも効果が出るまではそんなに時間はかかりませんが、完全に治るまでは続けた方が良いのです。自分の体が本来持っている回復力を助けるよう働く漢方薬は治り方が自然で無理がありません。逆に時間をかけてゆっくり治した方が良いのです。
そして、どうせ長くのむ必要があるのなら、本来身体に異物である化学薬品より、治り方に無理がなく身体に優しい漢方薬の方がいいのではありませんか?化学薬品の長期間服用の結果どんな影響が出るかという結果はまだまだそろっていません。今まで長いことのんでいた薬が、ある日突然重篤な副作用が出たからとこの世から失くなる可能性だってあります。その点二千年以上にわたり人体実験を重ねてきた漢方薬は安全なものだけが淘汰され残っていますから心配ありません。
漢方薬をいつまでお薬をのむかは、個人差もありますし、病気・症状の種類や程度、悪くなってからの期間によっても違いますので何とも言えないのです。昔はよく「体調を崩してから今日に至るまで要した期間 服用しなさい」といわれていました。慢性病であれば、漢方薬ではなくても短期間では良くならないものですし、お薬の服用を続けること自体なかなか努力の要ることです。しかも、化学合成薬品は作用がシャープなことから服用が長期にわたるとどうしても副作用の心配があります。その点漢方薬は二千年もの時を越えて人体実験を繰り返し、今なお残っているお薬ですから長期服用での安全性は保障されています。また「未病を治す(みびょうをちす)」といわれ、その時点で何の症状が無くても、服用を続けることにより将来の病気の予防にもなります。とはいえ、調子が良くなったらのみ忘れも多くなり、いつのまにかのまなくなるのが人の常…。
そこで、服用する期間の目安としては、悩ましかった自覚症状がなくなり、健康に自信が持て始めるまで続けられてみてはいかがでしょうか?この場合、あなたが主治医と言っても良いと思います。また、現代医学の諸検査で検索可能な病気であれば、検査値が正常の範囲に回復し、安定するまで頑張ってお続けになられることをおすすめいたします。そして、やめる時にはピタッとやめず、1日に3回の所を2回にし、1回にし、1日おきにし…などと、ご自分の身体と相談しながら段々遠ざけていくのが良いと思います。
漢方薬は、2000年以上も前の中国で誕生し、その時点で既に治療薬として完成、実用化されていました。それが時の政府の方針で抹殺されそうになっても、今日まで延々と続いているのです。もし薬として効果のないもの、害のあるものであれば自然淘汰され消滅して今日まで残ってはいないでしょう。TV番組などでブームとなっては、火が消えたように無くなっていく健康食品や、民間薬、健康茶と比べて考えてみてください。
漢方薬の優れた効果については、一般の方々は目にする機会がありませんが、以前から医薬学会、医学・薬学専門誌、各種研究専門誌などで毎回のように発表・報告がありますし、漢方エキス製剤が保険適用になってからは、現在約8割の医師が何らかの形で日常診療で処方しているとのことです
私たちも漢方専門薬局として創業70年ほどになりますが、漢方薬の素晴らしさに惹かれ、その効果を実感し続けて参りました。お客さまのお喜びの声に接する時、それが仕事の励みにもなっています。漢方薬の効果を知り、信じられるようになる方法は「百聞は一見に過ぎず」、ご自分で体験されますとお判りになるかと思います。是非おためし下さい。
また、「漢方薬を飲んだけど効果が無かった」という経験のある方は、まず以下の3点をご確認下さい
一言で言うと、副作用は全くないとはいえません。
ただし、おもしろい事に自然の生薬の中には主要成分一種類だけでなく、他に主なる作用を打ち消す微量成分が必ず数種類含まれており、それでバランスが保たれています。したがってその作用は化学的に合成された単一成分からなる鋭い化学薬品とはちがって穏やかです。単純に化学薬品と漢方薬とを比較した時には、副作用の頻度・程度は漢方薬の場合、問題にならないくらい少ないと言えます。
しかし、生薬成分の中にもアルカロイドといって作用の強い成分や下剤として使用される成分を含むものもあります。これらは誤った服用の仕方により、副作用を引き起こす恐れがあります。また、漢方薬の使い方・合わせ方は専門知識を必要としますので、これを間違えると治らないばかりか、他の病気を併発したりして悪化することもあります【この場合は副作用とは言わないのですが…。おもにこれが原因の「漢方製剤による副作用報道」が世間を騒がせたのは記憶に新しいところです】。最後に、漢方薬に限りませんが、いわゆる「特異な体質」、「過敏な体質」の方は、アレルギー反応として思わぬ副作用を起こすことがあります。
いずれにしても漢方の正しい知識を持った専門家に相談され、正しくおのみになる限り漢方薬の副作用を心配されることはないとお考え下さい。
現在、一般的には合成された化学薬品と自然な生薬からなる漢方薬とは、同時に服用することにより、好ましくない相互作用や副作用は生じないと言われています。現代科学レベルでは未解明な部分が多いのですが、ピンポイント発想で作られた化学薬品と、神経系-内分泌系-免疫系すべてに働きかける漢方薬とでは、作用メカニズムが異なるためと思われます。むしろ、併用されることで良くなるケースがたくさんあります。ただし、下剤に関しては相加作用がありますので、重複しないように注意が必要です。
また、医師の診察を受けると「現在、飲まれているお薬がありますか?」と聞かれることがあるかと思います。これは、化学薬品同士の相互作用により、効き目が悪くなったり、反対に効き目が強くなり過ぎたりするような好ましくない作用、危険な作用が発生しないかを確認するためです。この点、漢方薬を飲まれていたとしても前述のように、まず影響はありませんので心配ご無用です。【漢方薬を勉強していない医師は、「中止しなさい」と言う傾向がありますので…】医師と患者の信頼関係を壊さないためには、むしろ言う必要がないとも思います。長年漢方薬を飲みつづけられているお客さまが、主治医に漢方薬のことを伝えていなく、医師はどうして調子が良くなったのか不思議がってるという笑い話もありますよ。
なお、病院から医師により漢方エキス製剤をもらう場合もありますが、処方によっては漢方薬同士は避けた方が良い場合もあります。漢方に詳しい医師・薬剤師にお尋ねになることをおすすめいたします。